HEINEです。
この記事は僕が生徒とのノンフィクションシリーズの記事です。
借金200万の無職23歳の男S
2020年2月、一人の男が僕のもとへやってきました。
男はS。23歳で無職です。
聞けば、4月に新卒で一部上場企業に入社したにもかかわらず、12月辞めてしまったという若者でした。
…さて、どうしようか、と思いました。
僕は普段ビジネス関係者と会うことが多く、会社員と会う機会はほぼありません。
取引先の社員とかくらいです。
取引先の社員であれば仕事の話が通じるのですが、今目の前にいる男は話す内容がないのです。うーむ。。
とりあえずなぜ僕のもとへきたのかと聞いてみると起業がしたいためアドバイスが欲しいというものでした。
(紹介をしたのはコンサルティングをしている経営者でした。)
僕は会社を辞めてまで起業がしたいという目的に興味を持ち少し話をすることにしました。
そもそも、23歳で起業をしたいってすごいですよね。
僕はその頃考古学を絶賛している頃なので微塵も起業を考えてなかった頃です。
「で、何を知りたいの?」と聞いたところ、「起業の方法」だと。
要はビジネスモデルを知らないから教えて欲しい、とのことでした。
S「自分が思いつくのは物を仕入れて販売することくらいなので『せどり』かなと。。。」
「いいんじゃない。ビジネスとしてシンプルだしね。ただ、お金は大丈夫なの?仕入れのコストだってあるし、今現状会社辞めちゃったんでしょ?」
S「はい。お金はないです。」
「なるほど。どれくらい貯金はあるの?」
S「来月に最後の給料が入ってきて、それで全部です。」
「え、ない?なんでないの?使っちゃったの?」
S「実は…」
HYIPにキャッシングした200万を払い、飛ばれる
ここは長くなるので割愛しますが、結論からいうと彼はHYIPのMLMの詐欺に引っかかっていてアイフルとレイクから100万ずつ引き出してそのまま紹介者に預け、そのまま飛ばれていたんですね。
で、お金がない状態だったのです。
(これだけ聞くと非常に残念な気もしますが、実はこういう詐欺は今も結構あります。ちなみにそれ以外にもリボの借金もありました。)
話を戻します。
「え、じゃあどうやって仕入れるの?」
S「・・・。」
「なるほど。そういう感じね。しかし君はすごいね。」
S「?なにがですか?」
「いや、僕はホームレスとかをしてるからお金のなさってすごく理解しているんだよ。お金ってないとさ、精神的に情緒不安定になっちゃうのよ。普段しないようなことをしちゃったりね。だからお金がないことの恐怖を知っている。けど、君の顔からは恐怖を感じられない。さらにその状況で起業をしようと言っている。その精神力はすごいなって思ったわけよ。」
Sくんはピンときていないのか、答えませんでした。
それから僕はSくんにまずは今のキャッシュフローを全部洗い出してから僕に連絡してきなさいと伝えました。
現状のお金の状況がわからなければ、起業以前の話だからです。
彼は僕に言われた言葉をメモし、また連絡します、と一礼をして帰っていきました。
深夜に響く嗚咽の声
その夜、深夜に急にラインが鳴りました。
画面を見るとSくんです。
どうしたんだろうと思い、電話を取りました。
「はい。どうしたの?」
すると反応がありません。
「あれ?もしもーし。どうした?」
やはり反応がない。
電波かな?と思い、携帯を確認していると、向こうから嗚咽する声が聞こえてきました。
「…どうしたの?」
僕が聞くと、彼は泣きじゃくった声で話しました。
S「深夜に電話しちゃってすみません。…僕、HEINEさんに言われて、家で初めて借金の総額を計算したんです。それで、毎月いくら返さなきゃいけないかとかも計算したんです。そしたら、あまりの金額の大きさに怖くなっちゃって…。」
どうやら今まで現実を直視してこなかったから直視した結果、怖くなってしまったようでした。
そこで僕は言いました。
「…まぁ気持ちはわかる。お前が詐欺られたのは、不憫でもあるからな。けど良かったじゃん。僕がホームレスの時は誰も助けてはくれなかった。相談する人もいなかったしね。その点、僕がいるだけマシだろ。」
S「…はい。そうですね」
「で、どうするんだよ。ビビったとして、借金返済をしながらそれでも起業をしたいのか。それを聞かせてくれ。お前が本気なら、僕も考えなくもない。けれど、中途半端な気持ちなら僕も暇じゃない。自分でなんとかしてくれ。」
S「お願いします。借金返済もしたいですし起業もしたいです!」
「…OK。じゃあ、本気で人生を変える話をしようか。じゃあとりあえず次の日曜、時間空けといて。」
こうしてSくんと僕との関係が始まったのです。
つづく。